2009/10/27
リビングマシーン
(October 2003, Darrow school, NY, USA)
ハドソン川はニューヨークの水源である。その上流に位置するDarrow schoolはユニークな教育で知られる全寮制の私学である。この学校では、施設からの排水を全て五十坪程のガラスの温室に集めている。温室の中には直径2メートルのタンクが九つ並んでいる。排水はこれらのタンクを順々に通過していく。この一連のタンクはリビングマシーンと呼ばれるエコシステムで、生態系の働きで水を再生するシステムである。タンクの中では水中に伸びる植物の根を住処とする様々な生物が暮らしている。その生物たち、特に微生物が排水中の養分を分解し、自然に戻せるレベルにまできれいにしていく。最後部のタンクの先は池になっており、澄んだ水の中を魚たちが泳いでいる。
(October 2003, Living Machine at Darrow school)
Darrow schoolは水資源の将来に責任を持つことを教育の大切な理念としている。学校の全ての活動、教育プログラムがその理念に基づいている。エコシステムによって濾過された水は、最先端の技術で化学処理された日本の下水処理施設からの放流水の水質を上回る。濾過には二日程かかるから化学処理と比べるとスローなシステムだが、環境負荷が小さく、エネルギー消費も少ない。そして生態系の働きを体感する優れた環境学習の機会を創り出す。ここで学ぶ生徒は自らリビングマシーンを運転し管理する。水質を分析し、植物の手入れをする。これらの体験が水の未来に責任をもつ意識の形成につながっていく。
子どもたちと一緒に授業に参加し、バーベキューを楽しみ、朝の集会で挨拶をした。鮮やかな紅葉で染まった美しい森の中の二日間だった。