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(July 2005, Stockholm City Library, Stockholm, Sweden)
脳の中には夢のインデックスが隠されている。
インデックスを見れば、自分がみた夢をいつでも引き出すことができる。
その「声」が話すところによると、言葉はそれぞれ、そこにつながっている夢のストックをもっている。ある言葉を思いうかべると、つながりのある夢の一覧表があらわれる。その「声」は説明をつづけている。しかし、話している人の姿はどこにも見えない。あたりには誰もいない。何も存在していない。何もない空間。宙にういているような感覚。
その「声」がいうとおり、言葉をひとつイメージしてみた。しかし、その言葉の一覧表には何も登録されていなかった。ほかの言葉でイメージしてみる。すると一覧表の中に、登録されていた夢が現れてきた。
「うまくいきそうだ。」
そう思ったところで目が覚める。
(December 2005, Tokyo, Japan)
その金貨を手にした者は寿命が削り取られていく。
最初の七日目をむかえる朝に寿命は半分になる。その次の三日が過ぎるとさらに残りの命が半分に削り取られてしまう。次の二日、またその次の一日、その次の・・・。時間が過ぎていく度に残りの命が半分になっていく。寿命は限りなくゼロに近づくが、ゼロになることはない。
殺風景で荒涼とした場所に、たった一軒、酒場のような店がある。金貨は、その店で渡されることがある。テーブルに何人かの客があつまっている。そこに店の女主人が顔を見せる。妖艶で、どこか人間ばなれした容姿。女主人はテーブルの上で金貨を見せると、客を促して窓に近づく。窓はステンドグラスで装飾されていて、外は見えない。女主人はおもむろにステンドグラスを割ってしまう。すると、ガラスの間にぎっしりと詰め込まれていた金貨があふれてこぼれ落ち、何枚かが床に転がった。
「削り取る時間がゆっくりすぎやしないか?」
どこかから、微かに男の声が聞こえた。
「みんな、この金貨に手を出しちゃいけない」
自分の心の中で声が響く。
(July 2007, Amsterdam, Nederland)
街角を曲がると、50あまりある運河の一つに出会い、500あまりある橋の一つが目に映る。並木は左右に途切れることなく続き、切妻屋根の家並みが水の街路に映し出される。木々は路を美しくし、街歩きを庭園の散歩のように楽しい時間にしてくれる。
(Feburary 2010, Mt. Fuji, from Tokyo, Japan)
今日の日の入りは特別な美しさだった。
陽が沈んでからの数分間、空の輝きは息をのむほど美しい。
東京ではこの週末、日没のダイヤモンド富士になる。
一年にたった二回だけの空からのプレゼントだ。
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(February 2010, Mt. Fuji, from Tokyo, Japan)
娘さんは、興奮して頬をまっかにしていた。
だまって空を指さした。見ると、雪。
はっと思った。富士に雪が降ったのだ。
山頂が、まっしろに、光かがやいていた。
御坂の富士も、ばかにできないぞと思った。
太宰治「富嶽百景」より
(February 2010, Tokyo, Japan)
朝の光が地球をめぐり
すべての生命を新しくしていく。
いま、朝の光はこの街を走りぬける。
地平線の向こうの街に
新しい朝をとどけるために。