2009/11/28
Tlacotalpan
(July 1996, Tlacotalpan, Veracruz, Mexico)
トラコタルパンの街並はまるで建築博物館だ。500年前のコロニアル様式の回廊が続き、極彩色の鮮やかな建築が異彩を放っている。この町は15世紀に河川港として開かれ、漁業の町として発展してきた。町を歩いていると、そこここに当時の面影が感じられる。この町を訪れた7月は川エビの収穫の時期で、川に面したレストランでは例外なくエビの料理が並ぶ。簡単に塩で味付けされただけのエビにシラントロ(コリアンダー)を散らし、ライムをたっぷりとしぼる。さっぱりとした料理にメキシコのビールがよく合う。メキシコではビールにもたっぷりとライムをしぼる。グラス一杯のビールにライムを3つほど使う。氷、ライム、塩を合わせてつくるメキシコスタイルのビールはミッチェラーダとして親しまれ、食事の時間に欠かせない。
町は二、三時間もあれば一通り歩けるほどの大きさだが、行く先々の色の変化が楽しく、美しい建築様式に興味が尽きない。
2009/11/27
Divisadero
(September 1996, Ferrocarril Chihuahua al Pacifico, ChP, Chepe)
メキシコの北部、チワワ州の大渓谷Copper Canyonを鉄道で旅する。山賊の襲撃に備え列車の出入口は機関銃を装備した護衛が固める。列車は徐々に高度を上げていく。鉄道沿いに流れていた川は次第に視界からはなれ遥か下に遠のいていく。いくつかのトンネルを過ぎると、目の前には大渓谷のパノラマが広がった。
Divisadero(ディビサデロ)は渓谷で最も標高が高い駅で、海抜2,400メートルの断崖絶壁の上にある。駅を降りて歩くと間もなく渓谷を一望する断崖に出る。そこに張り付くように建てられた一軒宿Hotel Divisadero Barrancasに宿泊した。
(September 1996, Divisadero, Estado de Chihuahua, Mexico)
到着したとき、直前まで降っていた雨が上がり青空が見え始めていた。渓谷の彼方に2千メートル級の山脈が連なる。渓谷から立ち上る膨大な水蒸気が山塊の上に積乱雲をつくりだし、空一面を巨大な雲の塊が覆い始めた。雲は急速に広がり、雲の巨体に山脈が押しつぶされそうに見える。山頂には激しい雨が叩き付けるように降っているようだ。
翌朝、前日に降りしきった雨が渓谷に壮大な雲海をつくり、空には霧がベールのように広がっていた。空の空気が朝陽を浴びてオレンジ色に燃え始め、まるでオーロラのような光景が出現した。Divisaderoの大自然は圧倒的なスケールだ。一度目にしたらけっして忘れられない。
2009/11/24
Taos Pueblo
(July 2001, Taos Pueblo, Taos, New Mexico, USA)
千年前につくられた住宅。米国ニューメキシコ州北部の集落、タオスにその住宅はある。世界遺産に登録されたためか、訪れる人は多い。しかし、商業色は少なく落ち着いた佇まいを見せている。五階建ほどもある建物は、分厚い壁で覆われ、壁をくりぬくように開口が空いている。内部は小さな空間に分節され、強烈な陽射しを浴びながらも凌ぎやすい室温に保たれている。建物前面の広場にはパンを焼く土の竃が点在する。高さ2メートル程の半球状の形態が眼を引く。
最近では日本でも住宅の長寿命化が政治的な命題に取り上げられ、二百年住宅というコピーが登場した。しかし、これは建物自体が二百年保つように出来上がる、ということではない。建物は生き物だ。適切に人の手を入れることによって、初めて生き続けることができる。
タオス・プエブロを訪れたとき、ちょうど少年が壁に土を塗っていた。ひび割れた表面を手当てしている。それを長い年月繰り返すという。親から子へ、またその子どもたちも壁を塗り続ける。自分たちの住む場所を自分たちの手でいたわる。タオス・プエブロが千年を超えて生きているのは、人がそこにいて、建物の命を支えてきたからだ。千年後、タオス・プエブロはどんな姿をしているのだろう、ふと、千年後の風景を想像した。
2009/11/23
2009/11/22
森の礼拝堂
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