2009/11/24

Taos Pueblo



(July 2001, Taos Pueblo, Taos, New Mexico, USA)

 千年前につくられた住宅。米国ニューメキシコ州北部の集落、タオスにその住宅はある。世界遺産に登録されたためか、訪れる人は多い。しかし、商業色は少なく落ち着いた佇まいを見せている。五階建ほどもある建物は、分厚い壁で覆われ、壁をくりぬくように開口が空いている。内部は小さな空間に分節され、強烈な陽射しを浴びながらも凌ぎやすい室温に保たれている。建物前面の広場にはパンを焼く土の竃が点在する。高さ2メートル程の半球状の形態が眼を引く。
 最近では日本でも住宅の長寿命化が政治的な命題に取り上げられ、二百年住宅というコピーが登場した。しかし、これは建物自体が二百年保つように出来上がる、ということではない。建物は生き物だ。適切に人の手を入れることによって、初めて生き続けることができる。


 タオス・プエブロを訪れたとき、ちょうど少年が壁に土を塗っていた。ひび割れた表面を手当てしている。それを長い年月繰り返すという。親から子へ、またその子どもたちも壁を塗り続ける。自分たちの住む場所を自分たちの手でいたわる。タオス・プエブロが千年を超えて生きているのは、人がそこにいて、建物の命を支えてきたからだ。千年後、タオス・プエブロはどんな姿をしているのだろう、ふと、千年後の風景を想像した。