2009/09/27

十年前 感じたこと


(January 2005, Buenos Aires, Argentina

 ちょうど5年前の師走、メキシコに一年間の旅に出ることになった。OECFの海外援助案件、植林研究所を設計するためだ。慌ただしい年の瀬を迎えていた。
 年が明け、春の訪れとともに街は極彩色に色づいていく。メキシコの高原都市にいっせいにヘリオトロープ色の花が咲き溢れ、街の通りという通りが薄紫色に染まっていく。ハカランダの木々が花開く季節である。地面にはハカランダとブーゲンビリアの鮮やかな花びらが舞い散り、贅沢な花の絨毯が敷き詰められる。そんな中、通りには屋台が並ぶ。街はタコスやタマレスで一時の腹ごしらえする人々で賑わいを見せる。
 メキシコではあいさつは欠かせない。人と顔を合わせたときは Buenos-dias! レストランで食事を終えて出るときには、周りの人に Buen-Probecho! と声をかける。ちょっとした笑顔が返ってくる。
 豊かさとは一体、何だったのだろうか。この国の経済力は日本のそれと比べるべくもないのは確かである。しかし、ここでは、人々は確かに生きているということが伝わってくる。金銭的には貧しい人が多いに違いない。しかし、彼らには守るべき家族があり、愛する人がいる。「ここにあった」、そう感じた。
(December 1999, Inagekaigan, Chiba, Japan)