2009/12/01

El Monte Sagrado


(March 2005, El Monte Sagrado, Taos, New Mexico, USA)

 高級リゾートとして知られるEl Monte Sagrado。米国ニューメキシコのタオスに立地し、グリーン開発の成功例としても注目される。地域の伝統的な建築様式と材料によって建設されている。開発前に敷地内に残されていた建物が活かされ、新しく建設された建物と調和している。窓や扉の縁を彩る青や緑の鮮やかな色が赤茶色の土壁と美しいコントラストをつくる。平屋の宿泊棟の各部屋には専用の庭があり、その庭を通って部屋にアプローチする。客室棟に囲まれた共用庭の木立と池はリゾートらしい景観を演出し、敷地内の微気候を穏やかに調整する天然の空調装置としてはたらく。

 このホテルはさまざまな環境技術に取り組んでいるが、特筆すべき点は敷地内のエネルギーの自給自足を目指していることだ。代表的なものが地中熱を活用した空調システムとリビングマシーンによる水循環だ。ホテル内の排水は一カ所に集められた後、ゲスト用の温水プールの室内に送られる。テントが架けられた温水プールの一角に生い茂る植物たちの根元で排水浄化のプロセスが進む。あたかも観葉植物のように見えるグリーンは巧みにつくられた水槽の中で生育していて、根元の水中に生態系が形成されている。微生物、巻貝、小魚など、小さな生物たちが生活排水を浄化していく。異臭もなく、プールにいるゲストはここに排水処理場が併設されていることなど、思いもよらない。

 処理された水は共用庭の小川を経て池に流れていく。流れの途中にいくつもの段差があり、小さな滝が生まれる。滝を流れ落ちる水は飛沫をあげ、空気中の酸素を水中に取り込んでいく。水中の酸素濃度が高くなることで悪臭の元になる汚泥が減り、メタンガスの発生が抑えられる。池にはガマが生育し池底に張った根が泥の中に酸素を送り込む。こうして浄化された池に魚が泳ぎ、その魚がレストランの調理場に運ばれる。


 El Monte Sagradoは環境技術の企業が技術の成果を実証し、事業として成立することを社会に示すためにつくったリゾートである。ターゲットは一般のリゾート客であり、リゾートのマーケットで高い評価を得ている。ここでは敷地内のエネルギーを100%自給するための挑戦が今も続いている。