2010/02/16
パンドラの箱
(February 2007, Brussels, Belgium)
パンドラは神に似せてつくられた美しい人間の女性だった。
ゼウスは、あらゆる災厄が入った壷をパンドラに与え、「けっして開けてはいけない」と忠告する。この言葉によって、パンドラは、おさえのきかない好奇心にとらわれてしまう。このことをゼウスは知っていた。
かくしてパンドラは壷を開けてしまい、あらゆる悪と災厄が世界に放たれた。たったひとつ、「未来を見通す災厄」だけが放たれることなく、壷の底に残された。
一説によると「未来を見通す災厄」が放たれなかったために、私たちは未来を予知することができず、運命を知ることもない。だから、人間は運命は自分で切開くことができると信じており、あきらめず、希望をもちつづけることができるという。
また他の説によると「未来を見通す災厄」が放たれずに残ったために、人間はけっして叶わぬ「希望」をもちつづけ、尽きることのない苦しみにとらわれてしまう。「希望」こそが最大の悲劇であり、人間はあきらめる知恵を永遠に失ったの だ。