2009/11/06
Tokyo Tower
(December 2005, Tokyo Tower, Tokyo, Japan)
東京タワーに郷愁をおぼえる人は少なくない。東京に近代を象徴するタワーをつくる願望が生まれたのは明治の頃だろうか。明治の都市計画家は好んでパリを引き合いに出し、都市論を語った。当時、パリは近代のシンボルであり、放射状に整えられたオスマン流の都市像が首都のモデルとされた。当時の都市計画家にとって、都市は「生活の場」であるよりも「眺められる空間」であり、風景としての価値により多くの関心が払われた。
しかし、現代の東京はパリのオスマン式都市とも、他のヨーロッパのどの都市とも違う。かつて都市計画家たちが描いたユートピアが実現することはなかった。東京タワーが唯一、夢の痕跡のように立ちつづけ、街を見つめ続けている。