2010/01/20
出口
(January 2010, Nasu-shiobara station, Tochigi, Japan)
出口を選ぶとき、ボクたちは、その先に待ち受けている世界を選んでしまったことになる。出口は、やさしくボクたちを手招きしているけど、何もおしえてくれない。でも、そこは出口だから、外に出たければ、どうしても一つ選ばないといけないんだ。こうして、ボクは昨日も、その前の日も、もっともっと前の日も選ばなければいけなかった。
そして、あの日がきた。
あの日、選ぶはずのなかった出口が、ぽっかり口を開けてボクを待っていたんだ。気がついたらボクはころげ落ちていた。顔が傷だらけになった。顔についた泥を腕で拭って見上げると暗闇の先に空のあかりが見えた。這い上がろうとした。できるはずだった。ボクはそこから出たくて、朝まで、ずっとずっと考えた。
だけど、戻らなかった。
ボクは、転がり落ちたことを無理やり信じ込むことにしたんだ。
そして、そのとき、ボクの中で何かが壊れる音がした。
今日もたくさんの出口があった。そのひとつの出口の先に明日の出口が沢山があって、明日のあしたにも、その向こうの明日にも出口がある。ボクのまわりは出口だらけ。なのに、足あとはいっこだけ。