2009/10/19
海のイルミネーション
(October 2009, Tokyo bay, Tokyo, Japan)
東京湾の航路を確保するために浚渫船が汚泥を掻き揚げる。その横をクルージング船がすれ違う。浚渫船は自身の機関をもたないから、小さなディーゼル船が自分の数十倍もある浚渫船を牽引してあるく。日々堆積していく汚泥が湾の水深を浅くしてしまうため、都度、浚渫しなければならない。
現代社会にとって汚泥はゴミであり、それを取り除くために船を動かし、重機を振り回す。積み上げられた汚泥を処理するために巨大なプラントを建設し、膨大なエネルギーを消費している。現代社会では常にゴミが生まれ、その処理に追われ貴重な自然資本を食いつぶしている。しかし、この当然と思われているサイクルは、自然界の中では人間社会を除いて存在しない。
(October 2009, Tokyo bay, Tokyo, Japan)
自然界にはゴミは存在しない。排出されるもの全てが食物連鎖の中に組み込まれている。東京湾を埋め尽くす汚泥も食物連鎖の中に戻すことが出来れば、ゴミではなく、エネルギーに生まれ変わる。汚泥からエネルギーを取り出す取り組みは世界各地で始まっている。微生物燃料電池への挑戦だ。汚泥の中に電極を二本立ててみると、微量な電流が流れる。虫かご一杯の汚泥があればラジオが鳴り、小さなモーターが気持ちよく回る。微生物が汚泥を食べ、副産物で電気が生まれ、汚泥の量が減っていく。発電量は微生物の食事のペースに依存するから一定しない。スローエネルギーだ。ひとつ一つは微々たる発電量だが、東京湾いっぱいに電極を埋めたらどうなるだろう。海は一面のイルミネーションになることはまちがいない。
こんなプリミティブなアイデアが未来を変えるかも知れない。エネルギーを争奪する戦争も少なくなる。自然をじっと見つめてみると、明日への知恵が生まれてくる。
(October 2009, Tokyo bay, Tokyo, Japan)